副標目

副標目は医学文献中に頻出する概念を表す特殊なキーワードで、統制語と組み合わせて索引し、その統制語が文献の中でどのようなアスペクト(観点)で扱われているかを示します。

例えば 「オマリズマブを使用した重症スギ花粉症患者20例の臨床的検討」 という標題の文献には、疾患名 「花粉症」 と副標目 「薬物療法」、薬物名 「Omalizumab」 と副標目 「治療的利用」 を、それぞれ組み合わせて索引します。検索の際、副標目を統制語と組み合わせることで、主題に沿った的確な結果を得ることができます。

副標目による絞り込みの方法

副標目は通常の検索でも対象になるので、例えば 「花粉症 薬物療法」 と入力して検索すれば、「花粉症」 に副標目 「薬物療法」 が索引された文献もヒットし、ある程度は意図に沿った検索結果を得ることができます。

しかしこの例で言えば同じ文献中で花粉症以外の病名に副標目 「薬物療法」 が索引された文献もヒットしてしまいます。

また、多くの副標目はあまり一般的ではない、なかなか思いつかない用語なので、以下の方法による絞り込み検索がお勧めです。

絞り込み条件から選択
「疾患の診断や治療」 「薬物の副作用」 の場合は、疾患名や薬物名を入力し、「絞り込み条件」 中の 「診断」 「治療」 「副作用」 のいずれかを選択してください。すべての副標目を表示するには、絞り込み条件右上の 「 (すべて表示)」 アイコンをクリックし、更に 「副標目」 の欄の右端の 「 」 アイコンをクリックします。ここで適切な副標目を選択してください。
シソーラスブラウザの 「詳細情報」 から選択
シソーラスブラウザの 「詳細情報」 ページには、その統制語と組み合わせ可能な副標目が表示されるので、そこから選択することができます。
検索式を入力する
副標目を指定する検索式は 「SH=○○」 ですが、統制語と掛け合わせるときは、例えば 「花粉症;薬物療法/TH」 のように使います。このように統制語と副標目を組み合わせた検索式を入力すると、副標目を利用した検索を画面遷移を経ることなく一度で行えます。

副標目の索引ルールとリスト

副標目には、現在5つのカテゴリーに属する35個の副標目があります。

副標目の索引ルール
  • 副標目は、一つの統制語(シソーラス用語または医中誌フリーキーワード)に対し最大3個まで付与されます。
  • 統制語自体が副標目の意味合いを含む場合は重ねての付与は行いません。例えば、「薬疹」 に副標目 「化学的誘発」 は付与しません。
  • 各副標目は、それぞれ付与してよい統制語のカテゴリーが限定されていますが、例外的に通常は付与してはいけないカテゴリーの用語に付与する場合があります。例えば、「抑うつ」 はF1(行動と行動メカニズム)に属する用語で、F1は治療や診断に関する副標目の付与対象ではありませんが、「抑うつ」 に対しては実際に疾患と同様に治療や診断が行われることから、「薬物療法」 などの副標目を付与します。

薬物・化学物質に関する副標目

薬理学

薬物・化学物質や植物・藻類・キノコ類が生体(培養細胞を含む)に及ぼす作用・動態学・薬力学に対して付与される。生体内で合成される生理活性物質、ホルモン、化学伝達物質が薬物として投与された場合も含む。毒物の作用・動態学にも付与される。

付与可能な統制語のカテゴリー

B1(真核生物), D(化学物質および薬物)

毒性・副作用

薬物・化学物質・有害物質や食品・飲料、植物・藻類・キノコ類の生体に及ぼす有害な作用(毒性・副作用)に対して付与される。

付与可能な統制語のカテゴリー

B1(真核生物), D(化学物質および薬物), J2(食品と飲料)

治療的利用

薬物・化学物質や食品・飲料、植物・藻類・キノコ類が疾病の治療あるいは予防に利用されている場合に付与される。生体内で合成される生理活性物質、ホルモン、化学伝達物質が薬物として投与された場合も含む。また、ワクチンなどの生物学的製剤、放射性医薬品、麻酔薬・麻酔前投薬、創部への消毒剤、精油、検査・治療の前処置に用いられる物質にも付与される。物理的現象(ガンマ線、赤外線、固体レーザーなど)が治療に利用されている場合にも付与される.

付与可能な統制語のカテゴリー

B1(真核生物), D(化学物質および薬物), G1(物理的現象), J2(食品と飲料)

診断的利用

生体内に投与された薬物・化学物質が、疾病の診断に利用されている場合に付与される。

付与可能な統制語のカテゴリー

D(化学物質および薬物)

類似体・誘導体

同一親分子、または類似電子構造を共有する(類似体)か、他の原子や分子の付加、置換によってできた異なる物質(誘導体)であることを示すために、その元となる薬物・化学物質に付与される。

付与可能な統制語のカテゴリー

D(化学物質および薬物)

拮抗物質・阻害物質

何らかの機序により生物学的効果に拮抗、阻害作用する物質や因子を示すために、拮抗、阻害作用を受ける薬物・化学物質・生体内物質に付与される。

付与可能な統制語のカテゴリー

D(化学物質および薬物)

血液

血液中の物質の存在および分析に対して薬物・化学物質・生体内物質に対して付与される。

付与可能な統制語のカテゴリー

D(化学物質および薬物)

尿

尿中の物質の存在および分析に対して薬物・化学物質・生体内物質に対して付与される。

付与可能な統制語のカテゴリー

D(化学物質および薬物)

診断に関する副標目

診断

診断一般に対して、疾患名に付与される。

付与可能な統制語のカテゴリー

C(疾患), F3(精神疾患)

画像診断

画像診断一般に対して、器官、部位、組織および疾患名に付与される。X 線診断、放射性核種診断、超音波診断に対しては、それぞれの副標目が付与される。

付与可能な統制語のカテゴリー

A(解剖学), C(疾患), F3(精神疾患)

X線診断

X 線を用いた検査・診断に対して、器官、部位、組織および疾患名に付与される。

付与可能な統制語のカテゴリー

A(解剖学), C(疾患), F3(精神疾患)

放射性核種診断

放射性核種を用いた検査・診断に対して、器官、部位、組織および疾患名に付与される。

付与可能な統制語のカテゴリー

A(解剖学), C(疾患), F3(精神疾患)

超音波診断

超音波を用いた検査・診断に対して、器官、部位、組織および疾患名に付与される。

付与可能な統制語のカテゴリー

A(解剖学), C(疾患), F3(精神疾患)

病理学

疾病状態の病理学的検査・研究(病理解剖学・病理組織学・病理細胞学・免疫組織化学・精神病理学など)に対して、疾患名および器官、組織、細胞に付与される。

付与可能な統制語のカテゴリー

A(解剖学), C(疾患), F3(精神疾患)

治療に関する副標目

治療

治療一般に対して疾患名に付与される。薬物療法、外科的療法、食事療法、精神療法、放射線療法、リハビリテーションに対しては、それぞれの副標目が付与される。

付与可能な統制語のカテゴリー

C(疾患), F3(精神疾患)

薬物療法

薬物・化学物質・抗生物質の投与による治療に対して、疾患名に付与される。生理活性物質、ホルモン、ビタミン、ミネラルの投与を含む。

付与可能な統制語のカテゴリー

C(疾患), F3(精神疾患)

外科的療法

疾病治療における手術(移植も含む)に対して、器官、部位、組織および疾患名に付与される。内視鏡下手術、レーザー手術を含む。

付与可能な統制語のカテゴリー

A(解剖学), C(疾患), F3(精神疾患)

移植

同一の個体のなかでの移植、同種・異種の個体間での移植に対して、器官、組織、細胞に付与される。

付与可能な統制語のカテゴリー

A(解剖学)

食事療法

疾病時の食事管理、栄養管理、特別な食事による治療に対して疾患名に付与される。健康食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養補助食品からのビタミン、ミネラル、栄養素、薬理成分などの摂取による治療や予防も含まれる。

付与可能な統制語のカテゴリー

C(疾患), F3(精神疾患)

精神療法

精神分析療法、行動療法、自律訓練、認知療法など、心理的・精神的技法による治療に対して、疾患名に付与される。

付与可能な統制語のカテゴリー

C(疾患), F3(精神疾患)

放射線療法

放射線照射による治療に対して、疾患名に付与される。

付与可能な統制語のカテゴリー

C(疾患), F3(精神疾患)

看護

看護ケア・看護技術に対して、疾患名、診断・検査、治療に付与される。

付与可能な統制語のカテゴリー

C(疾患), E(分析, 診断, 治療の技術と機器)

リハビリテーション

患者の身体的、精神的、社会的、職業的な援助を行い、生活機能や社会的機能を回復、促進する技術や方法に対して、疾患名および外科手術に付与される。

付与可能な統制語のカテゴリー

C(疾患), E4(外科手術)F3(精神疾患)

予防

疾病や外傷・事故の発生を防いだり、軽減するために行われる手段や対策に対して、疾患名に付与される。社会問題(I カテゴリー)の一部である「自殺」、「家庭内暴力」およびそれらの下位語にも付与される。

付与可能な統制語のカテゴリー

C(疾患), F3(精神疾患)

疾患の原因などに関する副標目

病因

疾病の起因因子に対して、疾患名に付与される。起因因子として、微生物、環境や社会因子、個人の習慣(危険因子)を含む。

付与可能な統制語のカテゴリー

C(疾患), F3(精神疾患)

遺伝学

疾病の遺伝学的側面に対して、疾患名に付与される。

付与可能な統制語のカテゴリー

C(疾患), F3(精神疾患)

免疫学

疾病の免疫学的側面または血清学的側面に対して、疾患名に付与される。

付与可能な統制語のカテゴリー

C(疾患), F3(精神疾患)

化学的誘発

薬物・化学物質・有害物質や食品・飲料、植物・藻類・キノコ類によって発生した疾病状態に対して、疾患名に付与される。

付与可能な統制語のカテゴリー

C(疾患), F3(精神疾患)

合併症

二つ以上の疾病が共存している状態、またはある疾病の経過中に他の疾病が発症した場合に、疾患名に付与される。疾病同士の因果関係は問わない。腫瘍の重複の場合は付与されない。

付与可能な統制語のカテゴリー

C(疾患), F3(精神疾患)

転移性

転移先の部位別腫瘍および転移した組織型別腫瘍に対して付与される。

付与可能な統制語のカテゴリー

C4(腫瘍)

欠損・欠乏

生体の正常な必要量に比較して欠乏、または減少している生体内・生体外由来の物質に付与される。

付与可能な統制語のカテゴリー

D(化学物質および薬物)

有害作用

生体に与える有害作用に対して、診断、治療、予防、麻酔、外科、その他の処置、および紫外線、騒音、低温などの物理的現象に付与される。

付与可能な統制語のカテゴリー

E(分析, 診断, 治療の技術と機器), G1(物理的現象)

その他の副標目

疫学

一定の母集団(国、地域、人種、民族)における疾病の分布・発生率・有病率、疾病の起因因子や特質に対して疾患名に付与される。風土病や流行病の発生も含む。

付与可能な統制語のカテゴリー

C(疾患), F3(精神疾患)

予後

疾患の経過および結果の予測、転帰に対して、疾患名に付与される。

付与可能な統制語のカテゴリー

C(疾患), F3(精神疾患)

実験的

動物実験およびヒトや動物の培養細胞を用いた実験的研究に対して、疾患名に付与される。

付与可能な統制語のカテゴリー

C(疾患), F3(精神疾患)

副標目の変遷

2000年頃までは、約80個のMeSHのSubheadings由来の副標目と約20個の医中誌独自の副標目、あわせて105個の副標目がありましたが、2000年に臨床中心の副標目に絞り、廃止された副標目に関しては、必要に応じ統制語を付与するよう索引ルールを変更しました。

廃止された副標目は検索画面上の項目としては表示されませんが、「SH=○○」 のようにタグで指定すると検索が行え、索引されていた年代の文献がヒットします。

廃止された副標目を含む全ての副標目のリスト

SubHeaddingsとの互換性と 「PubMed検索」

35個の副標目のうち、31個はMeSHのSuHeaddingsの和訳です。医中誌Webの 「PubMed検索」 では、統制語に加え、副標目のこの互換性も生かして日本語でPubMed検索を的確に行えるよう工夫しています。

下表は副標目とSubHeaddingsの対照リストです。

対象副標目SubHeaddings
薬物・化学物質薬理学pharmacology
 〃毒性・副作用adverse effects
 〃治療的利用therapeutic use
 〃診断的利用
 〃類似体・誘導体analogs and derivatives
 〃拮抗物質・阻害物質antagonists and inhibitors
 〃血液blood
 〃尿urine
診断診断diagnosis
 〃画像診断diagnostic imaging
 〃X線診断diagnostic imaging
 〃放射性核種診断diagnostic imaging
 〃超音波診断diagnostic imaging
 〃病理学pathology
治療治療therapy
 〃薬物療法drug therapy
 〃外科的療法surgery
 〃移植transplantation
 〃食事療法diet therapy
 〃精神療法
 〃放射線療法radiotherapy
 〃看護nursing
 〃リハビリテーションrehabilitation
 〃予防prevention and control
疾患の原因など病因etiology
 〃遺伝学genetics
 〃免疫学immunology
 〃化学的誘発chemically induced
 〃合併症complications
 〃転移性secondary
 〃欠損・欠乏deficiency
 〃有害作用adverse effects
 〃疫学epidemiology
 〃予後
 〃実験的

参考